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おっぱいの話をします

お久しぶりの記事となります。

何人かの奇特な方々から「最近更新ないですね」とのご指摘を受けました。Facebookの方はちょこまかと更新しているのですが、こちらに記事を書く場合には色々考えて書かなくてはならないので、少し億劫になっていました。

今回は、以前から少し書こうと思っていた『おっぱい』の話です。医学的に役立つものではなく、雑学もしくは無駄知識となるかもしれない内容ですのでご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

まずは『おっぱい』という言葉です。なんなのでしょうかこの言葉。乳房そのものを指すのか母乳を指すのかもよくわかっていないのが現状で、ましてやその語源は謎に包まれています。

 

 

 

 

 

 

 

『おっぱい』に当てはまる漢字はなさそうです。ですから中国由来ではないと思われますが、色々調べてみると幾つかの有力(と言われている)な説がありました。どれも微妙ですが、その一部をあげてみます。

・「ををうまい(おおうまい)」から(副院長注;母乳のことでしょうか)

・ポルトガル語の父を意味する pai(パイ)から(副院長注;父=乳ということでしょうか)

・「お腹一杯」の「いっぱい」が転じた(副院長注;よくわかりません)

・中国の春秋時代の学者「王牌」(おうぱい)から(副院長注;実在するのかは不明)

などなど怪しい説ばかりです。結局よく分からないみたいですね。人類史において、様々な悲喜こもごもを引き起こしてきた『おっぱい』ですが、今回の記事を書くにあたって無駄知識を仕入れましたので、ご紹介いたします。

 

1.おっぱいの数

私たち人間には胸部に1対の乳房があります。つまりおっぱいは2つです。

ご存知の通り、哺乳類においておっぱいの数はその種類によって様々です。犬:5対10個、猫4対8個、ウサギ4対8個、ハムスター7対14個、牛2対4個、ヤギ1対2個、羊1対2個、豚7対14個…

 

 

 

 

 

 

以前、妊婦さんの数名の方に「おっぱいの数は産む子供の数に関係するんですよ、人類は最終的におっぱいが1つになるかもしれません」なんて言ったことがあります。実際『一度に出産する赤ちゃんの数でおっぱいの数が決まっている』という説を唱えておられる方が多いので、僕もそう思っていました。

しかし真面目に調べていくと、どうも違うらしいのです。確かに、哺乳類の中でも、牛や馬は乳首は複数ですが産む子どもの数は基本的に1頭です。この例から、子の数と乳首の数に相関関係はないと考えられます。

ニホンザルとピグミーチンパンジーの性行動研究で有名な榎本知郎先生の著書などを読むと、「我々人類はその猿からの進化の過程で生活様式が変化し、そのことが誘引でおっぱいの数が決定された」というのが現在の定説のようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単に説明しますと、我々は原猿⇒真猿⇒類人猿⇒人類という過程を経て進化してきた訳ですが、原猿(キツネザル、アイアイなど)の乳房の数は3対6個で、しかもアイアイなんかは下腹部に乳房があります。ところが真猿(ニホンザル、オランウータン)は胸部に1対2個に決定しています。どうやら原猿から真猿への進化の中でおっぱいの数が決まったようなのです。

原猿と真猿、何が一番変わったかというと、原猿は夜行性で安全な場所に巣を作ります。この安全な巣場所に子どもを置いて採食に出かけ、そして授乳をしに帰って来る、そういう生活をするわけです。ところが、真猿になるとかなり進化したがゆえに大きくその生活様式が変化しました。昼行性になり巣を作らず、乳児を常に抱いて移動する、集団で警戒体制を取るといったスタイルになったんですね。そこでメスは木の上で座った形で抱えて授乳するのに適応した形として、胸部1対の乳房を獲得したと考えられます。

 

 

 

 

 

 

つまり、働きながら赤ちゃんにおっぱいを与えるという一見無茶な進化のために、抱っこしながらおっぱいをあげやすい1対2個の乳房が胸部に固定化されたのです。猿の時からお母さんは大変だった訳ですね。

 

2.副乳について

「おっぱいの数」で書いたように我々人類はもともと複数の乳房であったものの、合理的な判断で胸部に2つとなった訳ですが、その名残が表立ってしまった状態を『副乳』と言います。

思春期の乳房が発達してくる時期や特に妊娠期に、ホルモンの影響で今まで気づかなかった、表に出ていない乳腺組織が大きくなってしまうことがあります。それだけなら良いのですが、その大きくなった副乳に痛みが出たりもします。

 

 

 

 

 

 

副乳は男性にも存在しますが、ワキからおへそにかけての『ミルクライン』と呼ばれる部位に発生します。胎児の6週目頃に7〜9対の乳腺のもとがミルクラインにできますが、胎児9週目頃には一対を残して退化して消えていきます。しかし、これが消えずに残ってしまい、育ったものが副乳です。

しこりや痛みがあって気になる副乳ですが、実際には冷やすとかそっとしておくというのが治療の本線になります。ご心配な方は乳腺外科などを受診してみても良いかもしれません。ただ大抵は一時的なもので、しばらくすると収まってくるケースがほとんどです。

 

3.どうでも良い映画の話

本当にとてもどうでも良い話ですが、1990年公開の映画『トータル・リコール』でおっぱいが3つある謎の女性が出てきました。ストーリーには全く関係ない、ほんのワンシーンしか出てこなかったキャラクターだったのですが、当時15歳だった僕には非常に衝撃的なものでした。

ずっと頭に残像があったのですが、その映画『トータル・リコール』が2012年リメイクされ再度上映されました。あんな一瞬しか出てこなかったおっぱい3つ星人が、まさかの再登場を果たしていましたよ。きっと「トータルリコール=おっぱい3つ星人」という、僕と同様の刷り込みがされた映画ファンが世界中にいたのでしょうね。

 

 

 

 

 

世界には困ったヒトがいるもので、美容形成手術でおっぱいを3つにしてしまった方もいます。正直あまり好きではありません。

 

4.おっぱいの大きさ

女性の中で、そのバストサイズというのを気にされる方も多いと聞きます。

大きいことは正義ではないと思いますが、果たしてそのおっぱいの大きさに生物学的な意味はあるのでしょうか。これも色々調べてみました。伝聞の情報もありますから鵜呑みにはしないでください。

まず生物の発達進化の最重要ポイントは種の保存、つまり繁殖に有利か否かということなのですが、おっぱいの大きさが過去生物学上で有効性があったという事例は確認されていないようです。授乳時に乳房が大きく膨らんでいる場合を含めるならともかく、授乳時以外で乳房が膨らんでいることが繁殖戦略上役立つ事例は、実はヒト以外に確認された例はありません。

哺乳類の中でも授乳期以外でも乳房が膨らんでいるのは乳牛以外では人間だけなんですよ。

 

 

 

 

 

人類の中でもアウストラロピテクス(猿人)やペキンネシス(原人)、ネアンデルターレンシス(旧人)は現代人類のような乳房の膨らみはなかったのではないかと推測されます。諸説あるようですが、デズモンド・モリス先生の『裸のサル』によるとおっぱいが膨らんできた理由として、直立2足歩行になったことと現生人類(ホモ・サピエンス)の女性の選ばれる側としての性格が他の哺乳類のメスに比べて大きくなったことが原因だと述べられています。

他の動物を見てみますと、ライオンなどはメスが発情すると独特のにおいを出して妊娠・出産可能であることを知らせますし、ニホンザルのメスは発情するとお尻が充血して赤くなることで妊娠・出産可能であることを知らせます。

人間の場合は、感覚器官として耳や鼻はあまり発達していないので声やにおいの情報で判断するのは難しく、どうしても視覚情報に頼ることになります。人間は直立2足歩行の動物であるため、お尻が見えにくくなってしまい、ニホンザルやチンパンジーなどの4足歩行の動物のように、お尻の状態で妊娠・出産が可能かどうかを知らせる方法では効率が落ちてしまいます。

そのために女性は、直立2足歩行であっても見えやすい『胸』をふくらますことで、妊娠・育児能力をアピールするようになってきたのではないかと考えられているのです。

松岡正剛の千夜千冊での『裸のサル』に関しての書評です。カッコイイ文章です。

 

もともとは、我々人間の祖先も昔は女性のお尻の状態を見て男性は相手が妊娠・出産可能かどうかを判断してきたと考えられます。おそらく人類の男性は生来、女性の大きく膨らんだお尻が好きだったのに、だんだんと女性の美しく膨らんだ胸が好きになってきたと考えるとよいでしょう。ただ、南米なんかでは大きなヒップこそ全て!という文化が完全に残っていますね。

最近ですと、キム・ガーダシアンがお尻の美容形成手術で話題になったのは記憶に新しいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただし、直立2足歩行になったという事実だけでは人間の女性の乳房が膨らんでいる根拠としては弱いとされ、以下のような説が唱えられています。

他の動物のメスの多くのセックスアピールはもっぱら自分が繁殖可能であるかそうでないかをオスに知らしめるためであり、繁殖可能な大勢のメスの中からオスに選んでもらうという性格は乏しいからです。そこで、出産や育児のあり方に注目すると、他の動物と現生人類の間で大きな違いがあります。人類の場合は子供が非常に未熟な状態で生まれてくるうえに自立できるようになるまで非常に長い年月がかかり、多くの場合は男性による生活サポート(外敵からの保護や獲物を持ってくるなど)を必要とします。

出産・育児で配偶者のサポートを必要とするようになると、他の哺乳類のメスのように一方的に配偶者を選ぶ立場ではいられなくなり、人類の女性は選ばれる側としての性格も持つようになります。そのために人類の女性が配偶者に選ばれるために行ったセックス・アピールが、2足歩行の生物が正面からもっとも見やすい場所にある「膨らんだ乳房(おっぱい)を胸部に持つこと」になったと考えられています。

 

 

 

 

 

 

僕の個人的な見解ですが、上記のような理由ですとおっぱいの大きさに優劣がある訳ではなく、膨らんで見えることそのものに意味があるのではないかと思います。

 

一方で男性のひげや胸毛は(雄ライオンのたてがみと同様に)過去、自らの美しさを強調して配偶者に選んでもらうためのセックス・アピールポイントだったのかもしれませんが、現代人においてそのアピール機能は少し廃れてしまっていますね。むしろ逆効果になっているようなフシもあるような、ないような感じです。

 

 

 

 

 

 

 

最後に、僕の人生の中でこんなに『おっぱい』という文字を入力することはもうないでしょう。今回は役に立たない情報がてんこ盛りでしたが、僕的にはこの記事を書くにあたって大変面白い論文や著作に多数触れることができて、とても満足でした。

参考文献は省略させていただきます。ご了承ください。

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