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妊婦さんのインフルエンザワクチンと治療

副院長です。

寒くなってきまして、我が家では既にコタツがスタンバイし、灯油ファンヒーターが引っ張り出されて来ました。

寒くなってくると、心配なのは様々なウイルス感染症です。特に皆さん気になっているのはインフルエンザではないでしょうか。当院でも毎年多くの方がインフルエンザワクチン接種を希望されてご来院されます。

そこでよくご質問があるのは、「妊娠していてもインフルエンザワクチンを射ってもいいですか?」「おっぱいに影響はありませんか?」といった妊娠、授乳期におけるワクチン接種に関してのことです。

まず、ワクチンについてカンタンに書きます。ワクチン療法というのは、弱いバイキン(抗原)を病気にならない程度にちょっぴり体に与えて、そのバイキンに対する自分の体での武器(抗体)を作るという予防方法なんですね。 で、そのワクチンには大まかに二種類あり「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があります。

 

 

 

 

 

 

生ワクチンの主なものにBCGやMR(麻疹風疹)ワクチンがありますが、この生ワクチンは妊婦さんや授乳中の方への接種は不可です(生なので弱いながらも生きているからです)。しかしインフルエンザワクチンに代表される「不活化ワクチン」は妊婦さん授乳婦さんでも基本的には問題ありません。

以前は「妊娠初期のインフルエンザワクチンは控えた方が良い」「妊娠中にインフルエンザになっても、治療はしない方が良い」といった意見もありましたが、現在我々産婦人科医の全ての治療基準となる『産婦人科ガイドライン』において、かなりはっきりとしたものが呈示されています。

CQ102 妊婦・授乳婦へのインフルエンザワクチン、抗インフルエンザウイルス薬投与は?

基本的にリスクはほとんどありえないので、妊娠期間いつでも良いからワクチンを射った方が良いし、治療もするべきということなんですね。

米国の調査で約 2,000 例のインフルエンザワクチン接種後妊婦において児に異常がないことが認められ、 米国疾病予防局(CDC)ガイドラインではインフルエンザ流行期間に妊娠予定 (妊娠期間に関係なく)の女性へのインフルエンザワクチン接種を推奨しています。日本では、国立感染症研究所から妊婦にワクチンを接種した場合に生ずる特別な副反応の報告はなく,また妊娠初期にインフルエンザワクチンを接種しても胎児に影響はなかったと報告しています。

産婦人科ガイドラインの解説では、次のようにまとめらています。

妊婦へのインフルエンザワクチン接種は 妊婦と乳児の双方に利益をもたらす可能性がある。

インフルエンザワクチン接種後、効果出現には約 2〜3 週間を要し、その後約 3〜4 か月間の防御免疫能を有するため、ワクチン接種時期は流行シーズンが始まる 10〜11 月を理想とする。

また授乳婦にインフルエンザワクチンを投与しても乳児への悪影響はないため、希望する褥婦(産後の方のことです:注副院長)にはインフルエンザワクチンを接種する。

これは、みなさんワクチン射った方が良さそうですね。

 

 

 

 

 

ですが、数年前に一部メディアやインターネット上で「インフルエンザワクチンには水銀が入っているから、避けた方が良い」なんていうお話がありました。これは一般的なワクチンに、劣化しないために添加されている防腐剤にエチル水銀がごく少量含まれていることから出たお話です。これに関しても、しっかりガイドライン上で触れられています。

わが国のインフルエンザワクチンには、防腐剤としてエチル水銀(チメロサール)を含有している製剤と含有していない製剤がある。

チメロサールを含んでいる製剤もその濃度は0.004~0.008mg/mLと極少量であり、胎児への影響はないとされている。

懸念されていた自閉症との関連性も否定された。 したがって、チメロサール含有ワクチンを妊婦に投与しても差し支えない。

『水銀』なんて聞くと、少しびっくりされるかもしれませんが、実はヤバいのはメチル水銀で、エチル水銀とは別物なんですね。普通に食べ物なんかにも含まれているものですから、全くヒステリックになる必要はありません。

 

 

 

 

どうしても抵抗がある場合は保存剤を使用しない製剤(北里研究所の0.5mL シリンジ製剤)もあります。ただ保存が効かないので取り寄せが必要ですし、昨年2016年は熊本地震の影響で、防腐剤なしのワクチンの製造自体がありませんでした。保存剤を使用しない製剤自体が高価です。もしご希望の際はあらかじめお問い合わせください(今年の製造情報はまだないようです)。

ということで、色々書きましたが「自力でなおすぜ!」という方は仕方ありませんが、僕としては妊婦さんには是非ともインフルエンザワクチンを射っていただきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

多分、痛くないと思います。

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